「世間虚仮(せけんこけ)」とは

「世間虚仮」という言葉がある。この現象世界は仮の現象であって、その現象世界での感情や欲望に追い回されて一生を過ごすのは嫌だな、と若い時から思って過ごしてきた。タンジブル(tangible)という英語もある。触知できるもの、つまり五感で感じる世界である。見て、聴いて、触って、嗅いで、味わって、つまり、目・耳・鼻・舌・皮膚で感じる世界である。


しかし、ネコやイヌを観ていると、どうやら人間より優れた感覚を有していると思われるところがある。とくに、イヌの聴覚や嗅覚などはヒトより優れているようだ。ネコもよく何もいない白い壁を緊張しながら注視しているのを観ることがある。あれは壁を観ているのではなく空中のなんらかのソンザイを観ているのかな、と想像する。つまり、ヒトの五感は非常に限られているということである。


そこで、「世間虚仮」にもどる。私の拙くてもそれなりの長さのある人生で考えるに、どうやら、五感で感じる世界は、比喩的にいうと、1%ぐらいではないか、と想像している。つまり、99%は五感の外にあるセカイである。さて、結論である。たとえば、大学受験に失敗した、失恋した、会社がつぶれた、家族が不和になりばらばらになった、これらはすべてタンジブル、五感の世界での現象である。私はネコのように、その外の99%のセカイを大切にして、しっかり生きてしっかり死ぬ、という生き方を続けていきたいとおもう。今朝の「夜明けのぶつぶつ所感」はこれまで。おしまい。